お絵描きが半分で終わる?左側のおかずは食べない? 正中線をまたぐ身体の動きと発達の関係

正中線をまたぐ身体の動きと発達

「絵を描くと、いつも画用紙の右半分だけで終わる」
「スプーンは右手で上手に使えるのに、左側のお皿のおかずには手を伸ばそうとしない」

こうした様子が気になって検索された方も多いのではないでしょうか。
その背景には、体の中心の線をまたいで手や目を反対側へ動かす「正中線をまたぐ動き」の育ちが関係していることがあります。

この記事では、正中線をまたぐ動きと発達のつながり、家庭で気づけるサイン、今日からできる遊び、相談の目安までをお伝えします。

その「片側だけ」には、正中線をまたぐ動きの育ちが関わっているかもしれません

正中線 画用紙の利き手側だけにお絵描き

結論からお伝えします。
絵が利き手側だけに偏る、食事で反対側のおかずを取ろうとしないという様子は、「正中線をまたぐ動き」がまだ十分に育っていないサインの1つとして見られることがあります。

実際にご相談で多いのは、「利き手はしっかりしているのに、反対の手をあまり使わない」「体ごと向きを変えて反対側の物を取る」というお子さんの姿です。
「不器用なだけ」と感じていたことを、体の使い方の発達という切り口で見直せる場合があります。

食事の場面が気になる方は、関連記事「『食べこぼし』は不注意?『丸のみ』は慌てて食べている?」もあわせてご覧ください。

正中線をまたぐ動きとは

正中線とは、頭のてっぺんからおへそを通り、体を左右に分ける中心の線のことです。
「正中線をまたぐ動き」は、この線を越えて右手で左側の物を取る、目で左右に文字を追う、といった動作を指します。

体の右側は主に左脳が、左側は主に右脳が動かしています。
中心をまたぐ動きには左右の脳の連携が必要で、両手や目と手を協調させる力の土台になります。

絵や食事の場面で起きていること

正中線をまたぐ動きが育っていないと、子どもは無意識に「またがなくてすむ工夫」をします。

  • 絵は利き手が届く範囲だけで描き、紙の反対側が空く
  • 反対側の物は体ごと回すか、近い手に持ち替えて取る
  • 紙やノートを斜めに置き、中心をまたがずに書く

これはやる気や性格の問題ではなく、体の使い方のクセとして現れます。

多くは3歳から4歳ごろに育つ動き

正中線をまたぐ動きは、赤ちゃんが体の中心で両手を合わせる時期を経て、寝返りやはいはいで左右の連携を重ねながら育ちます。

一般的には3歳から4歳ごろに反対側へ自然に手が伸び、4歳から5歳で利き手がはっきりしてくるとされています(参考:The Nurture『Crossing Boundaries』)。
ただし発達には個人差が大きく、時期だけで判断はできません。

なぜ正中線をまたぐ動きが発達に欠かせないのか

正中線 片手でボールキャッチ

正中線をまたぐ動きが運動や学習の土台になる理由を、3つの視点で見ていきます。

  • 左右の脳をつなぐ働き
  • 利き手の確立と目と手の協調
  • 運動・学習・ことばへの広がり

左右の脳をつなぐ「脳梁」と両手の協力

左脳と右脳は、「脳梁(のうりょう)」という神経線維の太い束でつながっています。
ヒトの脳梁はおよそ2億本以上の神経線維でできていると報告されています(出典:Aboitiz et al., 1992)。

正中線をまたぐ動きは、この脳梁を通して左右の脳を一緒に働かせる経験です。
紙を片手で押さえてもう一方で書くといった、両手が別々の役割で協力する動きも同じ土台の上に育ちます。

物をよく落とす、力の調整が難しい様子が重なる場合は、関連記事「ものをよく落とすのは、手のひらの原始反射が残っているのかも?」も参考になります。

利き手の確立と、目と手の協調

中心をまたぐ経験が少ないと、課題のたびに手を持ち替えやすく、利き手がはっきりしにくいことがあります(参考:Kids Groove and Grow)。

また読み書きでは目を左から右へなめらかに動かす必要があり、中心でひっかかると行を飛ばす、板書の書き写しに時間がかかるといった困りごとにつながることがあります。

運動・学習・ことばの発達への広がり

運動の発達と、考える力やことばの発達は密接に関わりながら進むことが指摘されています(出典:Diamond, 2000)。
体を動かす経験がことばを学ぶ土台をつくるという報告もあります(出典:Iverson, 2010)。

当ルームでも、あるお子さんのセラピーで、あえて右側にビー玉を置き、左側に容器を用意して「反対側へ入れる」遊びを続けたことがあります。
体の中心をまたぐ動きをくり返すうちに、そのお子さんのことばの習得が進んでいったケースがありました。

見過ごさないために:家庭で気づけるサインと考え方

正中線 食具を使って食べる 反対側へ手が伸びにくい

正中線をまたぐ動きは、家庭の何気ない場面で確認できます。

家庭で気づきやすいサイン

次のような様子が続く場合は、正中線をまたぐ動きの育ちを意識してみてください。

  • 絵や塗り絵が、いつも紙の片側だけで完成する
  • 反対側の物を、体を回したり持ち替えたりして取る
  • 食事で、反対側のお皿に手を伸ばさない
  • 縄跳び、ボール投げ、はさみなど両手を使う動きが苦手
  • 服の着脱で腕がひっかかる、片側だけ手伝いが必要
  • 座っているとき、体が左右どちらかに傾きやすい

着替えが特に気になる方は、関連記事「靴下と靴、脱いだり履いたりが大変な理由」もご覧ください。

原始反射が残っている場合の考え方

赤ちゃんに備わっている原始反射の1つに、非対称性緊張性頸反射(ATNR)があります。
これは顔を向けた側の手足が伸び、反対側が曲がる反射で、通常は成長とともに目立たなくなります。

この反射が強く残っていると正中線をまたぐ動きがしにくくなる可能性が指摘されており、読みの困難がある子どもで残存の割合が高かったという報告もあります(出典:McPhillips & Sheehy, 2004)。
ただし反射の残存だけで発達の状態は説明できず、家庭で断定はできません。

「様子を見てよい場合」と「相談を検討したい場合」

年齢が低く、遊びの中で時々またぐ様子があれば、あわてる必要はありません。
一方、就学が近いのにほとんどまたぐ動きが見られない、日常の困りごとが増えているといった場合は、一度専門家に見てもらうと安心です。

気になる点をメモして、まずはお気軽にご相談ください。進め方の質問だけでも受け付けています。
無料相談は、Bless Visionのお問い合わせフォームから受け付けています。

家庭で今日からできる、正中線をまたぐ遊び

正中線 四つ這いで片手上げ 親子でタッチ遊び

特別な道具がなくても、遊びや生活の中で正中線をまたぐ動きは育てられます。

体を大きく使う遊び

  • 交差タッチ:右手で左膝、左手で右膝を、リズムに合わせてさわる
  • 空中で大きな8の字:片手で大きく描き、慣れたら反対の手でも
  • スカーフやボールのパス:体をひねって反対側から受け取る
  • はいはい遊び:トンネルくぐりなど、左右の手足を交互に使う

音楽をかけて楽しい雰囲気にすると、動きが自然に大きくなります。

手先を使う遊び

  • 反対側へ入れるプットイン:右側に置いた物を左側の容器へ入れる
  • ひも通し:片手で持ち、反対の手を体の前で交差させて通す
  • 大きな8の字なぞり:壁や机に貼った紙を片手で大きくなぞる
  • 粘土や砂遊び:両手で押す、丸める、型に入れる

指を細かく使う遊びが苦手な様子があれば、関連記事「じゃんけんでグーとパーしか出ない? 指の分化と原始反射から紐解く発達支援」も参考になります。

生活の中に組み込む工夫

  • 食器を少し反対側に置き、手を伸ばす機会をつくる
  • 着替えで、両手を使って靴下を引き上げる
  • テーブルふきや窓ふきを、大きく左右に動かしてお手伝いしてもらう

遊ぶときのコツと、無理をさせない工夫

うまくまたげずに持ち替えても、責めないでください。
「できた」を一緒に喜ぶことが次の意欲につながります。
疲れているサインが見えたら、いったん切り上げて大丈夫です。

下の表に遊びのねらいと目安をまとめます。年齢はあくまで目安です。

遊び主なねらい年齢の目安ポイント
交差タッチ左右の連携、体の中心の意識3歳ごろ〜ゆっくり、左右を声に出す
空中で8の字中心をまたぐ腕の動き3〜4歳〜大きく、肩から動かす
反対側へプットイン手と目の協調、両手の協力2〜3歳〜物と容器の距離を少しずつ広げる
スカーフパス体幹のひねり、協調4歳〜受け取る役を毎回替える

家庭の遊びで、正中線をまたぐ動きの土台は育っていきます。
ただ、合わないやり方が定着してしまうと、あとで整えるのに時間がかかることがあります。変化が見えにくい、やり方が合っているか見立ててほしいというときは、専門家と一緒に進めると回り道が減ります。
親子で取り組むセラピーの内容と料金は、料金ページでご確認いただけます。

正中線をまたぐ動きと発達についてよくある質問

何歳ごろまでにできていれば安心ですか

一般的には3歳から4歳ごろに反対側へ自然に手が伸び、4歳から5歳で利き手が定まってくるとされています。
時期よりも、遊びの中で少しずつ増えているかどうかを見てください。

左利きか右利きか決まらないのは正中線と関係がありますか

関係することがあります。
中心をまたぐ経験が少ないと近い手を使いがちになり、利き手がはっきりしにくくなることがあります。

絵が片側に寄るのは発達の問題ですか

そうとは限りません。
年齢が低いうちは紙の一部だけに描くことはよくあり、成長しても反対側をほとんど使わない様子が続く場合に、体の使い方の視点で見直してみてください。

原始反射が残っているかどうかは家庭でわかりますか

家庭での自己判断はおすすめしません。
確認には専門的な観察が必要でほかの要因とも重なるため、気になる場合は日常の困りごとをふまえて専門家に相談すると役立ちます。

どこに相談すればよいですか。費用はどのくらいかかりますか

小児科、地域の発達相談、作業療法を行う機関などが窓口になります。
当ルームでも、発達の見立てと家庭での取り組み方の相談を承っています。

料金や進め方は料金ページと無料相談で確認でき、早めに動くほど家庭でできる選択肢が広がります。
発達の見立てのご相談は、無料相談のお問い合わせフォームから受け付けています。

正中線をまたぐ動きの発達を、遊びと相談で支えていきましょう

正中線の発達 セラピストと相談

Bless Visionは、リハビリの視点と心理の視点を組み合わせて、お子さんの体とことばの育ちを見立てるセラピールームです。
親御さんにも家庭でできる手法を習得していただくことで、セラピールームと同じ関わりをご家庭で続けられます。

「絵が片側だけで終わる」「反対側のおかずを食べない」という様子は、体の使い方の発達という切り口で見直すと、家庭でできることが見えてきます。
遊びで土台をつくり、気になる点は早めに相談することで、お子さんに合った進め方が選べます。

正中線をまたぐ動きが気になったら、後で「あのとき動いておけばよかった」とならないよう、まずは無料相談のお問い合わせフォームからお子さんの様子をお聞かせください。

発達には個人差があります。気になる場合は、自己判断だけで進めず、専門家にご相談ください。

参考文献・参考サイト