はさみで線どおりに切れないのは、手のひらの反射と目の使い方かも

はさみで線どおりに切れないのは手のひらの反射と目の使い方かも

「ハサミで紙に書いてある線どおりに切ろうとしても、どうしても線からはみ出してしまう」。
「何度練習しても、あまり変わらない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、指を1本ずつ分けて動かす力や、線を目で追い続ける力が、まだ十分に育っていないサインとして現れることがあります。

この記事では、その理由と、家庭でできる工夫・練習法、相談を考える目安をお伝えします。

その「線からはみ出す」動きには、指と目の使い方が関わっているかもしれません

はさみで紙を切りながら手元から視線をそらす子どものイラスト

結論からお伝えします。
はさみで線どおりに切れない様子は、指を1本ずつ分けて動かす力と、線を目で追い続ける力の両方、またはどちらかが、まだ十分に育っていないサインとして現れることがあります。

支援の現場でよく見られるのは、はさみを動かしている途中で手元から視線が離れ、相手の顔を見上げたり話しかけたりするお子さんの姿です。
様々な要因が考えられますが、視線を手元や線の上に保ち続けることが難しく、無意識に視線がそれてしまっている可能性があります。

「練習が足りない」「不器用なだけ」と感じていたことが、指と目の使い方という切り口で見直せる場合があります。

はさみが手からすっぽり抜けてしまう、物をよく落とすといったお悩みは、今回とは少し違う切り口になります(この違いはFAQでもご紹介します)。

はさみで線どおりに切れないとき、実際に起きていること

線どおりに切るには、次のような動きを同時に行う必要があります。

  • 親指と他の指を分けて動かし、刃をなめらかに開閉する
  • 手首を安定させながら、紙を持つ反対の手と協調させる
  • 線の少し先を目で追い、切る方向を確認し続ける

このどれかがうまくいかないと、刃の動きが不安定になったり、視線が手元だけに向いてしまったりして、線からはみ出しやすくなります。

「練習不足」「不器用」だけでは片づけられないことも

繰り返し練習しても変化が乏しいときは、やる気や練習量の問題ではなく、体の使い方の土台に理由がある場合があります。
無理に「もっと集中して」と促すよりも、何が難しいのかを整理してから練習を組み立てるほうが、近道になることがあります。

なぜ線どおりに切るのが難しいのか

指の動きと視線の両方を表した子どもの手のイラスト

ここでは、線どおりに切る動きに関わる2つの仕組みを見ていきます。

  • 手掌把握反射:指を分ける動き、手首を使う動きの土台
  • 眼球追従運動:線を目で追い続ける力

手掌把握反射:指を分ける動き、手首を使う動きの土台

手掌把握反射(パーマー反射)は、赤ちゃんの手のひらに何かが触れると、指を握りしめる反射です。
通常は生後数か月のうちに目立たなくなり、指を1本ずつ分けて使う動きや、手首を使う動きへと置き換わっていきます。

この反射の残存については、自閉スペクトラム症などの発達障害があるお子さんで多く報告されているというレビューがあります(参考:Sigafoos et al., 2021)。
指の分化に関わる場面については、関連記事「じゃんけんでグーとパーしか出ない? 指の分化と原始反射から紐解く発達支援」でも紹介しています。

はさみを扱うときも、指を分けて刃を動かし、手首の向きを微調整する必要があります。
この土台がまだ育っていないと、刃の開閉そのものがぎこちなくなり、線を意識する余裕が生まれにくくなることがあります。

眼球追従運動:線を目で追い続ける力

眼球追従運動とは、動いているものや、なぞっている線を、目でなめらかに追い続ける動きです。
視線と手の動きは連動して働くことが知られており、精密な指先の動きを行うときに視線がその動きを追いかけることを示した研究もあります(参考:Cavina-Pratesi & Hesse, 2013)。

はさみで線を切るときも、刃先の少し先を見ながら、線に沿って視線を動かし続ける必要があります。
この動きが苦手だと、手元だけに視線が向いて先の線が見えなくなったり、視線がそれて刃の向きが揺れたりすることがあります。

正中線をまたいで目を動かす場面については、関連記事「お絵描きが半分で終わる?左側のおかずは食べない? 正中線をまたぐ身体の動きと発達の関係」でも取り上げています。

なお、「手掌把握反射の残存が眼球運動にも影響する」という説明は、療育や支援の現場で使われている考え方の一つであり、学術的に確立した関係ではありません。ここでは、指の分化と眼球追従運動という2つの独立した要素として整理します。

この2つがそろって、「線どおりに切る」動きが完成する

下の表に、2つの仕組みと、線どおりに切る動きへの関わりをまとめます。

関わる仕組み 主な影響 見られる様子
手掌把握反射の残存 指を分ける動き・手首の動きが育ちにくい 刃の開閉がぎこちない、力の加減が難しい
眼球追従運動の苦手さ 線を目で追い続けることが難しい 手元だけを見てしまう、線からそれやすい

どちらか一方だけの場合もあれば、両方が重なっている場合もあります。
様子だけで見分けるのは難しいため、気になる場合は専門家の見立てを受けると安心です。
お子さんの様子を詳しく見てほしいときは、お気軽にご相談ください。無料相談は、Bless Visionのお問い合わせフォームから受け付けています。

家庭でできる、はさみの練習と工夫

はさみの刃のシールを見ながら紙を切る子どものイラスト

指の分化と眼球追従運動、それぞれに向けた工夫と、練習のコツを紹介します。

視覚的な工夫で「見るところ」を教える

視覚的な補助を使って、見るべき場所を分かりやすく示す方法があります。

支援の一例として、はさみの刃の中央部分に小さな丸いシールを貼り、「ここを見ながら切ろう」と促したところ、上手に切れるようになったケースがありました。
これは視覚的補助ツールを使った支援の一例ですが、はさみを使う前に目の動きのエクササイズにしっかり取り組むことで、よりスムーズにはさみの操作に取り組めた可能性もあります。

指と手首を育てる遊び

  • 洗濯ばさみを指でつまんで開閉する
  • 小さいシールを1枚ずつはがして貼る
  • 粘土を指でちぎる、丸める

目の動きを育てる遊び

  • ゆっくり動かした指先やペンを、頭を動かさず目だけで追う
  • 大きく描いた線や8の字を、目でなぞる
  • 的当てやボールを目で追ってからキャッチする

練習するときのコツ

  • 最初は1回の開閉で切れる幅の広い紙や、まっすぐな線から始める
  • 「線の先を見てみよう」など、視線を促す声かけを添える
  • うまく切れなくても責めず、できたところを具体的に褒める

家庭での練習だけでうまくいかない、伸び悩みが続くというときは、専門家と一緒に練習を組み立てると回り道が減ります。
親子で取り組むセラピーの内容と料金は、料金ページでご確認いただけます。

はさみで線どおりに切れないことについてよくある質問

何歳ごろまでにできていれば安心ですか

年齢の目安だけで判断するのは難しく、個人差も大きい部分です。
繰り返し練習しても変化が乏しい場合や、他の細かい作業でも同じような様子が見られる場合は、一度見立てを受けてみてください。

はさみが手からすっぽり抜けてしまうのも同じ原因ですか

抜けてしまう、落としてしまうというお悩みは、握る力の調整に関わる場合が多く、今回の「線どおりに切れない」とは切り口が異なります。
握る力については、関連記事「ものをよく落とすのは、手のひらの原始反射が残っているのかも?」で詳しく紹介しています。

シールなどの視覚的な補助は、いつまで使ってよいですか

補助を使うこと自体に期限はありません。
少しずつ補助を小さくしたり、回数を減らしたりしながら、本人のペースで手放していくのがおすすめです。

どこに相談すればよいですか。費用はどのくらいかかりますか

小児科、地域の発達相談、作業療法を行う機関などが窓口になります。
当ルームでも、指と目の使い方の見立てと、家庭での練習の組み立て方の相談を承っています。

料金や進め方は、料金ページと無料相談で確認できます。早めに動くほど、選べる練習法が広がります。
はさみの練習に関するご相談は、無料相談のお問い合わせフォームから受け付けています。

線どおりに切れない悩みは、指と目の視点で見直してみましょう

親子とセラピストが穏やかに相談しているイラスト

Bless Visionは、リハビリの視点と心理の視点を組み合わせて、お子さんの体の使い方を見立てるセラピールームです。
親御さんにも家庭でできる手法をお伝えするので、セラピールームと同じ関わりをご家庭で続けられます。

「はさみで線どおりに切れない」様子は、指を分ける力と、目で線を追う力という、体の使い方の視点で見直すと、家庭でできる工夫が見えてきます。
練習法を整えながら、気になる点は早めに相談することで、お子さんに合った進め方が選べます。

後で「もっと早く相談すればよかった」とならないよう、まずは無料相談のお問い合わせフォームからお子さんの様子をお聞かせください。

発達には個人差があります。気になる場合は、自己判断だけで進めず、専門家にご相談ください。

参考文献・参考サイト